平成24年6月22日〜24日  鳥取県立武道館弓道場





































境港市 「 水木しげるロード ・ 鬼太郎像 」































































個人戦 宮庄(みやしょう) 恭 平

「夢を矢にのせて」

笠岡博範



見上げると、雲が覆いかぶさっている。

梅雨空だ。

今にも泣きそうである。

鳥取県立武道館弓道場の観客席は満席状態。

立錐の余地も無い。

蒸し暑さで、みな団扇や、プログラムで顔を扇いでいる。

今朝ほど、9時から始まった個人戦の予選。





男子は、8射8中の選手が、7人も出た。

中国地域の競技力が上がってきたことが分かる。

その7人の選手の中に、あの宮庄の顔があった。

体つきはがっちりしているが、小柄なのですぐに彼と分かる。





予選が終わり、

8射8中の選手が入場し、決勝戦に入る。

いよいよ、サドンデスの戦いの始まりだ。

7人の選手は、みな、矢を一本だけ手にする。

1射目、宮庄は落ち着いて、矢を確実に的に入れる。

2射目も――、

3射目も――。

外せば、その時点で終わる。

選手は、一人減り、二人減りと・・・。


射詰めの7本目まで進む。

残った選手は、わずかに二人。

その二人の中に、あの小柄な宮庄の姿があった。


7本目も、落ち着いて的中させる。

もう一人の選手も見事に的中。

予選から数えると、二人は15本もの矢を、的に()て続けてきた。

どこにそんな強靱な力があるのか、驚かされる。

予選○○○○○○○○ 決勝○○○○○○○





決勝の8本目に入った。

宮庄の、引くその両腕のバランスに、わずかの狂いが生じた。

修正しようとしたが、そのまま宮庄の手元から離れて、矢は飛んでいった。

結果、的の外に矢が刺さる。

観客席から、悲鳴に近い声が、聞こえてきた。


もう一人の選手が的中させれば、その選手の優勝が決まる。

射場内も観客席の皆も息をのんで、彼の引く矢に目を注ぐ。



ただならぬ雰囲気に、場内は静まりかえる。

その緊張感に耐えられなかったのか、

彼も、外してしまう。

今度は、「アーッ!」というため息に近い声が、観客席から漏れる。


9射目に入る。

その前に、二人はいったん退場する。

9射目からは、小さい的に替えられるからだ。

直径12寸(36cm)から、直径8寸(24cm)の的に。


的替えが終わり、再び、二人の選手が入場してきた。





今度も、宮庄が後ろ立ちであった。

射位に立った二人。


相手の選手が先に、弓を打ち起こす。

ぎりぎりと音をたてながら、いっぱいに引き寄せる。

直後に、放ったその矢は、非情にも外れる。

また、悲鳴に近い声が観客席から聞こえてきた。

しかし、すぐに、シーンと静まりかえる。

自然と手が汗ばんでくる。

宮庄が、いつもの間合いで、ゆっくりと弓を打ち起こす。

最後の力を振り絞って、いっぱいに引き寄せる。

弓の矢摺籐(やずりどう)(狙い)から見える的の大きさは、わずか米粒ほど。

(かい)に入った。





宮庄は、この時、ほとんど無の状態であった。

優勝の二文字は頭から消え去り、

悟りに近い「(くう)」の状態とでも言えば良いのか・・。

しばらくして、宮庄は、我に返った、

思いのすべてを(夢を)、この1本の矢に託すだけ。

その瞬間、矢は放たれた。

「パーン」という乾いた音が、耳に飛び込んできた。

見ると、的の真ん中に、矢が突き刺さっている。

見事な的中のあまり、一瞬、時が、止まったかにみえた、

・・・が、すぐに、動きはじめる。

いっせいに、大拍手と大歓声が、場内に響き渡った。

観客席の隅に、両親が応援に来られていた。

両親は顔を両手で覆っていた。


宮庄の入部してからの1年あまりは、プレッシャーに弱かった。

試合に出れば、ほとんどを外して、悔し涙を流していた。

しかし、今日の晴れ舞台で、今までの悔しさをバネに、大きく成長する!

その雄姿に、しばし感動!

祝福の拍手が鳴り止まない中、

射場に一人立つ、宮庄の(まなこ)には、かすかに光るものが見えた。

                                 

        

 




 
個 人 優 勝





〈男子〉 宮庄恭平 【崇 徳】






〈女子〉 中浜 愛 【呉商業】











い よ い よ 団 体 戦








団 体 予 選 成 績
 
赤色が決勝トーナメント進出の上位16校)

的中 女  子 的中 男  子
15 呉商業 松江北 鳥取西 出雲 19 岡山工業
14 市立呉 倉吉西 大社 17 県立広島工業
13 柳井 米子西 宇部中央 16 崇徳 呉工業
12 益田 津和野 豊浦 県立広島商業 15 米子工業 倉吉西 出雲
11 米子南 倉敷天城 境港総合 14 市立広島工業
10 長府 文教女子 青谷 13 江津工業 美鈴が丘 境港総合 興陽 鳥取西
高森 沼田 12 下松工業 益田翔陽 青嶺 大田 青谷
米子 岡山朝日 大田 興陽 11 八頭 浜田工業 岡大理科附 宇部西
井原 下松 呉宮原 10 下関西 南陽工業
岡山芳泉 松江市立女子 岡山操山 鳥取湖陵 津山工業 沼田
8以下 下関工業 総社 水島工業 浜田 境




抽 選 会





























女子決勝トーナメント





呉 商 業













出 雲













倉 吉 西








































男子決勝トーナメント




第1回戦



















崇 徳 − 米子工業
















準々決勝



崇 徳 − 美鈴が丘
















準決勝



崇 徳 − 岡山工業

















決 勝



崇 徳 − 倉 吉 西













二的 中嶌







三的 森永





 


落前 川瀬





 


落 枡本

すでに倉西は、全員本座に座る





 


大前 宮庄

崇徳はここから、4射目に入る













 








 








 


最後の矢







 
 


 


決 勝

テンポの速い倉吉西が、1射目で、いきなり横皆中の5中。

応援席から大拍手!!

一方の崇徳は、2番,4番,5番が外し、まさかの2中。

3本差の大ピンチ。

ここから、崇徳は1本1本、確実に決めていく。

テンポの速い倉吉西は、2射目で1本外し、3射目で2本、4射目で2本外す。

そうして、すでに、本座の椅子に座って、結果を待っている。

崇徳は、やっと、落ちが3射目を離して12本目が的中。

4射目もゆっくりした間合いで、5人が確実に入れていき、

ついに大逆転。

17中対15中で、優勝!!





















































宮庄恭平 ・ 中嶌範旭 ・ 森永祥太 ・ 川瀬優志 ・ 枡本 龍




























森永主将 「広島に帰る前に、報告に来ました。 団体・個人ともに、やりましたー!!」        、

ねずみ男 「よかった、よかった、おいらも祈ってたよ、おめでとう!」                  
 、






団 体 戦

崇徳高校  4年連続の決勝進出の快挙 !

平成21年度 優勝 ・ 平成22年度 優勝 ・ 平成23年度 準優勝 ・ 平成24年度 優勝