第56回全国高校総合体育大会
北東北インターハイ
2011年8月4日~7日
岩手県営武道館
8月1日(月)
7:50
広島駅新幹線改札口辺りに崇徳高校弓道部員と保護者の方々が集まって来た。
今日は、北東北インターハイに出発する日である。
駅構内は出勤時間だっため、人々は足早に歩いている。
記念の写真を撮ってもらおうと、近づいて来た人たちにお願いしたが、みな断られる。
無理もない。出勤前の急いでいる時である。
そんな私を見ていた一人の初老の男性が、撮ってあげようと笑顔で歩いて来られた。
その方のご厚意にちょっと感動!
「はい、チーズ、ぱちり」
撮影後の「ありがとうございましたーッ!」の弓道部員の大きな声が、
急ぎ足の人たちの足を止める。いったい何事が起こったのかと・・。
ホームに上がり、広島発8時10分「のぞみ8号」に乗車。
(「のぞみ8号」というその名には、本大会の到達最低目標への思いが込められていた。)
一路、盛岡に出発。
気分は上々。
前日、前々日に刈りあげたインターハイ選手の頭は、みんな輝いていた。
「のぞみ8号」が東京駅に12時13分に到着。
ホームに出て急いで東北新幹線のプラットホームまで駆け足で移動。
途中で駅弁を購入して、東京発12時28分の「はやて167号」に飛び乗る。
朝が早かったせいか、多くはうつらうつらしていたが、何人かは勉強していた。感心感心。
15時16分に盛岡駅に到着する。広島駅から7時間余りを要した。
盛岡駅前では、ちょうど私たちを歓迎するかの如く、
台湾舞踊団による「獅子舞」「竜の舞」が行われ、大勢の人で賑わっていた。
これはー、到着早々、縁起がいい!
盛岡市弓道場
8月2日(火)
6:00 ホテルで朝食をとる。
7:00に開店するという「作業着専門店」まで、ナビで調べて車を飛
ばす。着いた日の盛岡市は気温が低く寒さを感じるので、ジャージ(上
着)を求めに行ったのだ。
選手から見て、気に入るようなジャージは無かったようだが、風邪を引
いたら大変なことになるということを説明して、半ば強引に着せた。
その後、本会場の岩手県営武道館に行ってみることにした。
私事…10年程前の全国教職員弓道大会で、広島県の弓引き仲間の
先生方とともに来た思い出のある武道館だ
選手控室(柔道場)
巻藁場
受付を済まして館内に入ってみると、柔道場が控え室になっていた。
まだ、来ている学校は少なかった。
中国、四国の貼り紙のある場所に荷物を置いて、練習を開始した。
控え室の柔道場を出て、渡り廊下を歩いていくと、剣道場があり、そこが巻藁練習会場になっていた。
さらに、いったん外に出て、向い側にある弓道場が的前練習会場として使われていた。
そして、最も広い武道館のメイン会場の中に、仮設の弓道場が設けられ、そこが試合会場になっていた。
8月2日の午前中にもかかわらず、武道館の弓道場は人が多く、一手でしか練習が出来ない。
今日と明日が公開練習の日。これからどんどん増えてくる。
多くは明日にしているが、あえて多い日を避けて、今日、公開練習に臨む学校もある。
さらに増えてくると思われるので、午後からは、昨晩練習した盛岡市弓道場に移動して練習することにした。
武道館の(練習用)弓道場
移動途中、昼食に盛岡名物の冷麺を、有名な「ぴょんぴょん舎」で食べて行こうということになった。駐車場に停めてある車はいっぱいの状態。
さすがに有名店だけある。
味は、韓国風冷麺だった。生徒は、激辛、特辛を頼んでいた。私は標準のものを食した。少し酸味があり、さっぱりしたつゆに、麺は弾力性があり、大変に美味しかった。機会があればまた食べにいきたい。
「ぴょんぴょん舎」で腹ごしらえをしてから、盛岡市弓道場に向かう。こちらはまだ人が少なかった。
行くと、岡山工業、神辺旭、岐阜総合、神島、佐賀龍谷が来て、すでに練習していた。
坐射練習が出来るほど空いていた。
明日から、どこの練習会場を選ぶか?
練習会場は盛岡市弓道場をはじめ全部で8会場ある。
県営武道館、盛岡一高、盛岡三高、市立盛岡高、盛岡商業、岩手大学、県立大学)
今年の大会には、仮設練習場が設けられなかった。
この選択が、試合に大きく影響を及ぼすと思ったのは、私だけではなかった。
盛岡市弓道場
8月3日(水)
6:00、ホテルで朝食をとる。生活のリズムを変えない。
8:00にホテルを出発。
昨日、一昨日と練習して、落ち着いて弓が引け、非常によかった盛岡市弓道場に
行くことにした。
8:20、盛岡市弓道場に到着。早速、弓を張り、体操、素引きを始めた。
ところが、昨日までとは打って変わって、すでに多くの学校が集まって来ていた。
道場内を覗くと、一的に10人近くが並んで、順番を待っていた。
一手を引くのに20分~30分もかかりそうである。
先に来られていた岡山工業の仲西先生に尋ねると、
「ここの道場はなかなか良いという評判が広まったのか、今朝は多くの学校が押し
寄せて来ましたよ、笠岡センセ~」(^-^)/~ と、いつもの尻上がりの岡山弁で、
これまたいつもの笑顔で、私に話しかけて来られた。
その後、8会場ある練習会場の情報をネットで調べ、いろいろと検討した結果、思
い切って練習会場を「盛岡商業高校」に変えることにした。その決断をしたのは、
9時30分を過ぎていた。
今日は14時から公開練習がある。準備を含めると、遅くとも13時には会場に行
かなくてはならない。
今から練習会場を変えるのは賭けであった。
すぐに、選手を招集して、荷物をまとめさせて車に飛び乗らせた。
すでに10時をまわっていた。
10時30分、盛岡商業高校に到着。
来て大正解。
この日は、貸し切り状態だった。
1時間程、立ち練習を4回行う。調子はもう一つだったが、時間が迫ってきたので、
12時10分に盛岡商業高校を出発。
道が混んでいたために40分もかかって、12時50分に試合会場の駐車場に到着。
車から降りて弓具、荷物を降ろしたり、なんだかんだで控え室まで、到着してから
更にまた10分以上もかかった。
すぐに、準備をし、練習会場で付け矢を2本ほど行って、試合会場(公開練習)の招集場所に向かう。行くと倉吉西の福光先生がいらっしゃって、私たちよりも2立ち前の立順で公開練習を行うと言われた。
倉吉西の公開練習が終わってから、14時ちょっと前、崇徳の選手が入場してくる。
もちろん予選会場と同じ第2射場である。
倉吉西(公開練習) | 崇徳の入場(公開練習) |
堀 ・ 吉村 ・ 中嶌 ・ 竹政 ・ 枡本 ・ 宗本 | |
公開練習の結果は(大前)堀・(落前)竹政・(落)枡本の3人が皆中。
(二的)吉村は3中。(中)中嶌が1中。(6番)宗本が0中。5人で16中を出す。選手は落ち着いて引けたと言う。的中はまずまずであったが、不安材料が無いわけではなかった。
この後、練習会場へ移動して少し練習した後、この日は早めに休むことにし、ホテルに向かった。
8月4日(木)
6:00 ホテルで朝食をとり、8:00に出発する。
8:30に試合会場(岩手県営武道館)に到着し、
その後、控室に向かう。
控室に行くとすでに多くの学校が来ていた。
今日は9:30から開会式が行われる。
10:10に開会式が終了した。
【個人戦】
うちの主将の堀和也が、午後からの個人予選に出場する。
開会式終了後、少し休んで、本会場の弓道場に一緒に移動し、調整を始めた。
今年は女子個人戦が先に行われるので、練習は女子個人の選手が優先された。
堀は、春の絶好調の時期に比べると、もう一つであったが、盛岡入りしてからも、9割以上の的中率を維持していた。
練習会場で、私が手を添えて射形と狙いを確認していく。
直前の調整は、まずまず。
堀の立順25番。
よって、3立ち目の第1射場の5番であった。
13:00、招集がかかる。
13:30、控えから出てきて、入場する。
いよいよ、主将の堀が、個人予選会に臨む。
果たして、皆(崇徳)の期待に応えて、先陣を切っていけるであろうか・・。
結果は、見事に皆中!
館内に拍手が響きわたる中、準決勝進出を決める。
少し休んだ後、弓道場に行き練習をする。
集中力を、また徐々に高めていく。
15:30に招集がかかり、
16:00、準決勝に臨む。
準決勝では、
いきなり、1本目を外してしまった。
決勝進出は、3中以上が条件である。
もう、1本も外せない。
緊張がピークに達する!
(応援席にいる崇徳の)皆は、
「主将ー! 落ち着いてー!」と手を合わせる。
2本目、的中! 3本目も的中!
いよいよ、最後の4本目。
ゆっくりと打ち起こし、弓を引く。
大三から、会に入る。
しばらくしてから「パーン」と音が響く。
「やったー!」と
崇徳のみんなは、心の中で思わずガッツポーズ!
明日の決勝進出を決めた。
8月5日(金)
早いもので盛岡に来てから、今日で5日目になる。
6:00 ホテルで朝食をとる。
7:50 昨日と同じ盛岡商業高校に向けて出発する。
8:20 到着。弓道場まで歩いて行くと、すでに何校か来ていた。
今日は、いよいよ団体予選が行われる日である。
9:00開始が女子団体予選。
12:00開始が男子団体予選。
昨年度と男女が入れ替わる。
崇徳の立順は42番なので、14:00ごろの試合になる。
試合まで、かなりの時間がある。
いつもと同じように準備をしてから、的前練習を始めた。
しばらくしてから、
アクシデント発生。
二番の吉村が顔を歪めながら私の所に来て、両腕から背中にかけて痛みが走ったと申し出た。
すぐに、両上腕部にテーピングをして、痛みを抑えるスプレーを吹きかけて応急処置を行う。
そうして吉村にゆっくりと弓を引かせる。
確認すると、なんとかいけそうだという。
ここからは、吉村につきっきりで様子をみていく。
12:00に盛岡商業を出発して、試合会場の駐車場に12:30到着。
弓具を持って、直接練習会場の武道館弓道場に向かう。
そこで、再度練習を行い、最後の調整をする。
吉村が不安であったが、なんとかやれるのではないかと送り出した。
団体予選
13:30招集。
14:00に入場。
前の試合が終わり、間もなくして、
進行係の「起立!はじめ!」の合図で、崇徳の予選が始まった。
開始早々、大前がいきなり外す。
2番の吉村は痛みがひどいのか、いつものように弓が引けていない。
あーっ、滑走させてしまった。
3番の中嶌も外す。
【×××】×が3つ並ぶ。
落前の竹政と落の枡本が入れて、なんとか次に繋げる。
1射目【×××○○】
2射目に入ってからも、大前の堀がまた外す。
いったいどうなっているのか!
続く吉村は、また滑走。顔を歪めている。
3番の中嶌が何とか的中させる。さあこの調子でと思ったところが、
今度は、落前の竹政が外す。落の枡本は入れる。
2射目【××○×○】
前半の10射が終わり、わずかに4中。
後半で、挽回しないと、決勝に残れない。
3射目に入って、大前の堀がやっと的中させる。
しかし、吉村は、また滑走。
その後の3人が的中させ、望みを繋げる。
3射目【○×○○○】
最後の矢。4射目に入って、大前が的中。
次の吉村が、最後の意地を見せる。
苦痛で顔を歪めながらも、歯を食いしばって的中させる。
思わず「よーし!」と大きな声援を送る。
中嶌も入れて、後、2本詰めれば、当確ラインに達する。
ところが、落前の竹政が外してしまう。
最後の落が入れる。落は皆中。「枡本―ッ、本当によくやった。」
4射目【○○○×○】
後半は8中で、計12中という結果であった。
堀 ××○○
吉村 ×××○
中嶌 ×○○○
竹政 ○×○×
枡本 ○○○○
団体予選が終わり、まもなくして
予選通過ラインは11中になったという報せを受ける。
なんとか、決勝進出を決める。
最悪の状態に陥っても、最後まで諦めずに、一生懸命に弓を引いた
そういうみんなに勝運が備わったんだと一人目頭を熱くした。
この後、抽選会が行われ、決勝トーナメント1回戦の相手が決まる。
予選2位通過の延岡学園であった。
終了後、すぐに吉村を病院に連れていったところ、軽い肉離れと診断された。
個人決勝
15:00から女子個人決勝が始まる。
男子はその後になるので、16:00ごろの開始になると読む。
堀を少し休ませて、練習会場で調整する。
広島県では、女子で皆実の中下奈美選手が残っていたが、
○×と決勝の2本目で終わる。
しかし、ここまで残ったのは、わずか15人(96人中)。
立派な成績である。
女子の決勝戦の終了前に、招集がかかる。
立ち順の早い選手は、長時間待たされる。
16:00過ぎに男子が始まった。
堀は1立ち目の第2射場の4番であった。
試合前の調整はうまくいったが、
試合では1本目を外してしまった。
本来の力が出せないまま終わる。
無念であったと思う。
明日の、団体決勝トーナメントに向けて
気持ちを切り替えるには、しばらく時間を要した。
8月6日(土)
6:00 ホテルで朝食をとる。
7:50 今朝も盛岡商業高校に向けて出発する。
8:20 到着。大会は終盤に入る。
今日はどこも来ていない。貸し切り状態。
9:00から女子団体決勝トーナメント1回戦。
11:20から男子団体決勝トーナメント1回戦。
崇徳の立ち順は26番。
13立ち目。
12:30ごろが招集になる。
いつものように練習を開始する。
ここで、二的を2年の吉村をそのまま使うか、
それとも3年の宗本を起用するか。
もし宗本を起用すれば「堀、竹政、宗本」の3人が揃うことになる。
ここで、3人が揃うことになると言ったのは、
3年は、彼ら3人しかいなかったからだ。
彼らの、一級上の学年と一級下の学年は、部員が10数名いた。
その間に挟まれて、谷間のような学年が彼らだった。
特に、一つ上の、この春卒業した学年は、層が厚く、
しかも、力のある選手が多かった。
だから、昨年までの彼らには、全く出番がなかった。
いや、出番が無かったどころか、今年に入ってからは、
一つ下の学年のパワーに、押され気味になっていた。
しかし、「堀、竹政、宗本」の3人は
どんな状況や環境になろうとも、
『(毛利元就の)三矢の教え』のごとくに
3人は協力し合って、精一杯、部のために頑張ってきた。
そのことを、私はよく知っていた。
だから、高校弓道生活の終幕前に、
3人が揃って全国の晴れ舞台に立つというのは、
実は、ずっと以前から決められていたことなのかも知れない。
そんなことを頭の中で巡らしながら、
よし、最後は、この3人を揃わせて試合に臨もうと
腹を決めた。
決勝トーナメント1回戦
12:30招集。
13:00入場。
崇徳 | 堀 ○○○○ 宗本 ○×○× 中嶌 ○××○ 16中 竹政 ○○○○ 枡本 ○○○○ | 延岡学園 | 13中 |
大前・落前・落の3人が引っ張っていく
という今年の崇徳の形が、やっと出せた。
男子の2回戦が15:00から始まる。
軽く食事をとってから、次の試合に臨む。
対戦相手は松阪工業。
決勝トーナメント2回戦
15:40招集。
16:10に入場。
崇徳 | 堀 ○○○○ 宗本 ○××○ 中嶌 ×○○○ 16中 竹政 ○○○○ 枡本 ○○×○ | 松坂工業 | 14中 |
2回戦でも、前半は大前・落前・落の3人が
一手皆中させ、引っ張っていった。
宗本、中嶌も健闘する。
これで、ベスト8入りが決定し、
明日の準々決勝に進む。
対戦相手は地元岩手県の福岡高校だ。
8月7日(日)
6:00 8日目の朝、最後の朝食をとる。
出発したら、もうホテルには帰らない。
そのまま帰広するので、荷物を昨夜のうちにまとめさせておいた。
7:00 今朝は、本会場に向けて車を走らせる。
7:30 本会場の控え室に到着。
勝ち残った学校のほとんどが、練習会場に移動していた。
女子が9時から、男子が9時30分から準々決勝。
いつもの体操を行い、素引き、巻き藁練習を始めた。
8:20に練習会場に移動し、調整を始めた。
普段と変わることなく。
決勝トーナメント 準々決勝
9:10に招集がかかり、控えに移動する。
9:40に入場。
対戦相手は、地元岩手県の福岡高校。
今日、こうして、地元岩手県の福岡高校と対戦させて頂けるというのは、
大変に光栄なことであり、
今年のインターハイに出場させて頂いた最高の思い出になる。
崇徳として、全力で戦っていきたい。
館内は福岡高校の応援一色。
被災を乗り越えて来られた方々の応援である。
崇徳 | 堀 ○××○ 宗本 ××○○ 中嶌 ○○×○ 12中 竹政 ○○○○ 枡本 ○××× | 福岡 | 15中 |
ピーンと張り詰めた中、
前半は拮抗した戦いであったが、
後半に入ってから、福岡が的中を積み重ねていく。
息詰まるような緊張感の中、互いに全力で取り組んだ戦いであった。
順位決定戦
崇徳 | 堀 ○○ 宗本 ×○ 中嶌 ○○ 8中 竹政 ○× 枡本 ○○ |
順位決定戦(10射)の結果 | ||
5位 | 慶応義塾 | 9中 |
6位 | 崇 徳 | 8中 |
7位 | 長 岡 | 7中 |
8位 | 南陽工業 | 5中 |
女子準決勝に進んだ倉吉西
女子決勝は秀岳館―加治木であった
【表彰式】